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2017年9月24日

働くにあたってメンバーシップとして事業するかジョブ契約に従事するかが曖昧な日本の雇用慣行






おはようございます。

2017年9月の記事です。

「働くにあたってメンバーシップとして事業するかジョブ契約に従事するかが曖昧な日本の雇用慣行」という長たらしいタイトルですが、筆者が以前アップした労働契約や労働環境に関する記事に対して読者の皆さまより少なくない反応がございまして、その中でこれこそが問題の本質ではないかというご指摘がありましたので、それを深掘りする形で記事にさせていただきます。

広義の労働契約については、メンバーシップ型契約とジョブ型契約の大きく2つの類型に分けることができます。


ジョブ型雇用とは


ジョブ型雇用とは、筆者の勝手な理解を書きますと、日本以外の諸外国で主に採用されている雇用形態はほとんど全てジョブ型雇用だといえます。

すなわち、職務や勤務場所を雇用主が明確に定め、採用を望む労働者も職務や勤務場所を絞り込んで応募します。

労働期間は有期であることが多く、期間が来たらまた別の職務に応募するか、転職するか、もしくは同じレベルの仕事を続けるにしても契約満了もしくは中途合意解約後の再雇用という形になるのが普通です。

当然に、採用する企業としては求めている職務に沿った人員を採用します。

一方、労働者は自らの職歴に即した仕事につくことができますし、職務として定められた内容や条件以外の条件を行う義務は「一切」ございません。

業務時間外の飲み会に行く必要はないし、そもそもそんなのは全て業務範囲外となります。

職務記述書(ジョブディスクリプション)に書いていないことは業務範囲ではありません。

いつでしたか、筆者も日本以外の某星国の金融機関を訪問したのですが、ちょうど時間が17:00直前に受付についたところ、受付嬢は内線で来訪を告げた後、そのままそそくさと客である我々(筆者と当時の筆者の上司)をそのまま置いて退社していきました。

どうやら彼女のジョブディスクリプション(職務記述書)には17:00までの受付業務ということが記載されていたようなのです。

このジョブ型の雇用形態が、日本以外の世界の常識であることを、まずは理解しておいてもらいたいと思います。



そんなら日本型メンバーシップ型雇用とは



ジョブ型雇用の対比として、メンバーシップ型雇用という言葉がありますが、普通にメンバーシップという言葉を使った場合、日本以外の諸外国においては、メンバーシップという言葉のとおり、経営者に準ずる立場として、メンバーシップ契約によってほぼ必ず現物株またはストックオプションが与えられ、取締役または執行役員、それが無理でも裁量権のある部長(単なる処遇、対外呼称ではなく実質的に社の権限が与えられているという意味において)クラス以上のポジションとなります。

権限は大きいですが、責任も重大です。

例えば、シリコンバレーといったスタートアップ企業が多く生まれる地域を見ますと、メンバーシップ契約を結ぶコアメンバーは、必ず現物株やストックオプションをもらいます。

そうでなければ優秀で能力を持ち、大きく羽ばたく可能性ある人材を採用できません。

もちろん、企業の期待にそぐわないパフォーマンスしか挙げられないそうした幹部(メンバーシップ)は、見切りも早くあらかじめ契約時に定めた退職オプションを与えた上で放り出されることもままあります。



日本独自といってよい雇用慣行について



しかるに、日本において特に上場大企業の正社員(総合職、基幹職といった呼ばれ方をされるのが一般的)と言われる労働形態を見ますに、組織に対する滅私奉公、サービス残業や職務記述書(ジョブディスクリプション)に書いていないことも忖度して暗に要求している割に、現物株やそれに代わるストックオプションを持たされることはほとんどと言って良いほどなく、わずかにもらえる給与から天引きで従業員持株会が斡旋されるといった程度です(わずかに補助金がつく場合もあります)。

日本における、この日本的メンバーシップ型雇用はその代わり、新卒一括採用で大量に人材を獲得し、OJTや社内研修でふんだんに教育を行い、数年毎のジョブローテーション(部署配置変え)などを組み合わせ、職務に必要な知識と経験を積ませます。

ここのところは非常な教育研修人事ローテーションコストが企業側にかかっています。

中には海外勤務といった高度かつ外国語といった高スキルを要求するジョブローテーションも入ってきます。

職務や勤務地の範囲を限定していないことから、基本的には企業の都合により、自由に配置転換を行えます。

上場している大企業に多い日本的雇用で、総合職や基幹職といった職系に多く見られる雇用形態であります。

すなわち、職務記述書がない、という意味ではジョブ型雇用でないのは明らかなのですが、さりとて日本以外の世界で普通に行われているメンバーシップ型雇用でもない、という不思議なシステムなのです。

ストックオプションを与えない、という代わりに無意識に付与しているのかどうかはわからないのですが、ほぼ犯罪行為を犯さない限り企業側からの解雇はできず、強力な終身雇用システムに組み込まれ、その中で非常に強固なる身分保障がなされます(ここに、莫大なコストがかかります)。

上場企業に新卒で入ったならば、原則65歳まで企業グループで雇用先の斡旋を含めて面倒を見てもらえる、同期の中で本社で出世し役員、社長になった者の最も大切な仕事が、自分の世代に対する再就職先、出向先の斡旋と紹介であるという厳然たる事実がそこにあります。

したがって、日本における正社員は、業務や職務の「成果」よりも、その組織にコミットしている「姿勢」が評価されがちであるということになります。

もともと、職務記述書(ジョブディスクリプション)に書いてないことを暗に要求しているのですから、その「要求」するところは長時間にわたる業務へのコミット(のふり)であるところの忠誠心だったりするのですが、雇っている企業側が東証1部上場企業でろうが何だろうが激しく社会や当局から糾弾される(ブラック企業云々)世の中になってきている現在、空前の人手不足とあいまって、働き方を取り巻く環境は非常に目まぐるしく変わりつつあるそんな気がしています。

本来経営の一翼を担い応分の負担を求め解雇のリスクも大きい本来のメンバーシップ契約社員に対し、日本の労働慣行においては正社員という解雇されにくいというだけのメリットしか与えず、新卒であらゆる部署を経験させた挙句に40代で課長クラスに実際になるまでは、ひたすら滅私奉公、自らがどこまでこの会社で上にいけるのか実際よくわからない苦行を強いているように「見える」日本のいわゆる上場大企業の労務人事については、早晩相当程度流動化して行くものと思っています。



逆に、日本的ジョブ型社員は



逆に、ジョブ型社員については、現物株やストックオプションはもらえませんし、そもそも昇進も無く、ずっと同じポジションですが、与えられた職務記述書にそって仕事をしている以上は解雇もありません。

それが契約というものだというのが日本を除く世界の労働契約の常識であるようです。

この点、日本においては、こうしたジョブ型社員を、非正規の派遣や契約社員やパートやアルバイトという、実は実質的に解雇や雇い止めをしやすい雇用形態で賄っているということになり、さらに摩訶不思議に写っているのかもしれません。

一般派遣業法、いわゆる派遣会社がこれほどの密度で集まっている会社は、日本くらいだそうです。

日本における労働市場の流動性が高まらない、と言われて久しいですが、一部こうした機能をかかる派遣会社が担っているという側面もあるのかもしれませんが、そもそも労働契約も契約の一種であることからすれば、最初の紹介料はともかく、数年にも渡って派遣し続ける(人材派遣会社が手数料をもらい続ける)というのは健康的ではないような気がします。

直接取引すればよいだけの話であります。

このように、公共の場で意見するのは非常に勇気がいることかもしれませんが、いずれ社会の認識が進めば一つのエポックなところになるのかとも思い、寄稿させていただきました。

有能か優秀かどうかはわかりませんが、現時点でとにかく20年間労働者を続けてきたことだけは誇りたいと思っております筆者からは以上です。

(平成29年9月24日 日曜日)