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2014年11月26日

「ビール ラーメン カツ丼」(幸せの黄色いハンカチ 名優高倉健を悼む)


南極物語もよかったですね(写真は南極観測船宗谷)


おはようございます。

2014年11月の記事です。

さて、今日は昭和の名優の話をします。

コップに注がれたビールを両手で握りしめて肩を震わせて飲み干す。

間をおかず運ばれてきた醤油ラーメンのチャーシューを脇にどけ(もちろん後で味わう)、麺をやおら箸で掴んで肩で息をしながらほうばります。

そしてカツ丼です。

肉と卵の温かさと味が口内に染み渡ります。

ご存知、映画「幸福の黄色いハンカチ」。

主人公が網走刑務所出所後初めて食べる娑婆の食堂の味です。

「あのう、正油ラーメンとカツ丼ください」と訥々と注文した、あの品々です。

筆者はこれまで、ビールとラーメンとカツ丼をこれほどうまそうに食べる人を見たことがありません。

演技があまりに見事でしたので、監督の山田洋次は1テイクでオッケイを出しましたが、どうしてそんなに上手いのかと尋ねた返事に絶句します。

「この撮影がありますので、二日間何も食べませんでした。」

高倉健はこのような、まさに「最後の」映画俳優だったのです。

撮影現場では、彼が座ったところを見た人はおらず、非番の日でも撮影所に顔を出し、あまりにも寒いので他の出演者やスタッフは焚き火にあたっていたのですが、高倉さんは自分は非番ですから、自分があたると他のスタッフに迷惑がかかりますからと固辞され隅のほうに立っています。

どうしようもなくなったスタッフ全員に頼み込まれて「じゃあ、あたらせてもらいます」と一段落した話や、一人で撮影所近くのガソリンスタンドに現れて、黙々と車の洗浄をしていたといった、映画の場面そのまんまという逸話に事欠かない人です。

手を抜く方が疲れる。

高倉健はそうして映画俳優の人生を全うしました。

謹んで哀悼の意を表します。

その高みにはるかに及ぼない、数多くの浅才の後輩の一人であります筆者からは以上です。

(平成26年11月26日 水曜日)

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