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2016年8月6日

(2016/08/06)出光興産に登場した創業家というモノ言う株主について記録しておきます







おはようございます。

本日は2016年8月6日ですが、現在、出光興産という民族系石油元売り大手が進める同業の昭和シェル石油との合併について、大株主である出光興産創業家が反対を表明し、にわかに話題となっています。

出光興産の創業理念は非常に特徴的です。

出光興産のホームページには、これら会社の考え方が掲載されていますので、ポイントを説明します。

一.人間尊重
・出光商会の主義の第一は人間尊重であり、第二も人、第三も人である。
・人間がつくった社会である。人間が中心であって、人間を尊重し自己を尊重するのが当然である。

一.大家族主義
・いったん出光に入りたる者は、家内に子供が生まれた気持ちで行く。
・会社における総ての事柄は親であり子であり、兄であり弟である、という気持ちで解決する。
・(家族だから)出光は首を切らないという事が常識。

一.独立自治
・社員各自が、その持ち場持ち場において独立せよ。
・自己の仕事の範囲では全責任を負い、完全に事務を遂行せよ。
・独立自治の精神を体得し、個々に鍛錬強化されたる社員が、社全体の方針の下に一致結束し、団体的総力を発揮する。

一.黄金の奴隷たるなかれ
・出光は事業を目標とせよ。金を目標とするな。しかしながら決して金を侮蔑し軽視せよと言うのではない。
・事業資金として大いに金を儲けねばならぬ。経費も節約せねばならぬ。冗費無駄を省かねばならぬ。(中略)ただ将来の事業の進展を邪魔するような、儲け方をしてはならぬ。あくまでも事業を主とし、資本蓄積を従とし、この本末を誤ってはならぬ。

彼らにとって会社というものがなんであるかということを、高らかに謳っています。





解雇も定年もない






時代の要請もありまして、若干変化しているところはありますが、会社は従業員と取引先の生活を保証する後ろ盾であり、解雇はなく定年も定めない、給与は労働の対価として与えられるものではない、労働組合は必要ない、といった考え方です。

さて、この会社が他の会社と合併を行うべきかということについては、現経営陣は規模の経済や効率化を考えて推進したい立場にあり、一方創業家側は上記の理念に反するので反対という立場です。

単にいきなり入ってきた大株主が、モノ言う株主として「配当をもっとよこせ」だの「リストラして経費を削減せよ」といった「通常の」経済合理性にかなった要求をしてくるのとは一線を画しています。

そもそも最初は個人商店で、創業家は最初から一貫して大株主なわけです。

そして、その創業家は、大家族主義を標榜した出光のすべての従業員の声なき声を代弁しているという一面もあるのです。

経営者に対し従業員は普通モノが言えません
昇進や待遇、そして役員への登用といった人事権は経営陣に帰属しますので、当然のことなのです。

ですので、会社の理念を体現している従業員の意見を表明できる力をもった創業家としては、未だ3分の1超の株式を保有していることを梃子にして、昨今の株主全権主義とでも言えるコーポレートガバナンスのあり方に異を唱え、労働者主権主義とでもいうべき、日本においては「普通」のコーポレートガバナンスを見直す機会を提供しているのかもしれません。

終身雇用ですから従業員は会社に50年以上関わることになります。

そして、創業家は、実に100年以上この会社を実質的に率いてきたのです。

現在、任期を決めて、パートタイム的に入っているのはむしろ経営陣の方だ、という理屈には、一定の理があります。

絶対に10年後には一人もいるはずのない、「現経営陣」に果たして正常な判断ができるのかということなのです。

しかしながら、それを完全に貫くには、出光はすでに上場企業ということなのです。

上場企業というのは株主という会社の持分の地位に、市場を通じて零細な単位から他者がたやすく入ることができるという形態です。

逆に、足を抜けることも容易です。

市場で、株式を売却すれば、株主責任からは解放され、時価でのキャッシュ(現金)に変えることができます。

撤退も非常に容易です。

そして、増資を行うことで、会社自体の資金調達が容易にできます。

出光は、その歴史の中で、資金調達を目指して上場を選択しました。

一旦上場した以上、かならず株主資本は巨大化していきますので、すべての株を持ち続けるのはいかに巨大でも有限の創業一家には不可能となるのです。

したがいまして、資金調達がどうしても必要で、それなくば破綻するといった場合であったとしても、上場を選択する代わりに創業家が出光という会社に数百億円でも融資なり資本注入なりしておけばよかったのかもしれません。

今や出光は上場企業であり、それを上場廃止まで持っていくのは巨額な資本が必要となり、いかに大株主である創業家にも難しいことでしょう。

現在の持ち株である3分の1をすべてを担保に入れて、他の出光株を買ったとしても、過半数を超えるかどうかは微妙ではないでしょうか。

しかも、過半数を握ったとしても、半数近くの他の株主の意見や意思を無視するわけにはいきません。

どこかで妥協が必要になるはずなのです。

上場のメリットをすでに受けている企業体でありながら、どこまで自身の主張を、大株主ではあるが完全株主ではない創業家が通すことができるのか、ものごとを衡平に見る好例として非常に注目しています。

株主優待目当ての零細株主の筆者からは以上です。

(平成28年8月6日 土曜日)

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