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2019年10月5日

(2019/10/05)三菱商事の海外子会社の345億円損失に見る人を雇うことについての大きすぎるリスクについて

不正取引





おはようございます。

2019年10月の国際経済に関する配信記事です。

日本の総合商社首位の三菱商事が、2019年9月に同社シンガポール石油関連子会社「ペトロダイヤモンド・シンガポール」において約3億2000万ドル(約345億円)もの損失が発生することを発表しました。

これは、現地の中国籍の社員が(すでに解雇と刑事告訴)、顧客との取引にはない(相手のない自己勘定の取引)原油先物取引やデリバティブ取引(金融派生商品取引)を繰り返し、取ったポジションの「価値」が急速に下落して結果として損失が膨らんだというものです。

不正を起こして会社に巨額の不正による損失を被らせた社員は、2018年11月に同社に入社した中国国籍の男であり、中国法人顧客との原油取引を担当していたとのことです。

そして、入社後まもなくして、2019年1月頃から、顧客との取引とは全く関係ないデリバティブ取引を開始し、原油相場の見通しを見誤った2019年6月頃から急速にポジションの含み損を悪化させたということです。

こうして、2019年8月に元社員が欠勤することとなった際に、担当する取引を調査し不正と巨額の損失が明るみに出たというものです。

当該社員を2019年9月18日付で解雇し、翌日の9月19日付にて刑事告訴しましたが、このような巨額の損失を一個人が弁償できるわけもなく、結局、損失は当該海外会社、ひいては親会社である日本の総合商社首位、三菱商事(の株主)が支払うということになったわけです。

ちなみに関西経済界の重鎮である関西電力の歴代役員に繰り返し支給された菓子付き金の延べ棒や高級スーツお仕立券といった、ただれた残念な関係にしろ、海外子会社の一担当者が数百億円の損失をわずか数ヶ月で出してしまうことにしろ、会社の持ち主である株主からはえらく遠いところで簡単に会社自体の信用は毀損されるものなのです。

これを、代理人(エージェンシー)コスト、と呼ぶ場合があります。

会社の株主(持ち主)として、代理人(経営者)やその会社の従業員(雇用者)に仕事を任せることは一般的なのですが、この所有者と代理人では絶対に利害関係の不一致点があり、その解消をめざすための「エージェンシーコスト」は組織運営上避けられないコストなのです。

このエージェンシーコストというのは、人類社会が最高度に巨大化させた組織機構の一つである「国家」の運営においても非常に当てはまる考え方であり、憲法の制定から普通選挙の実施による議員(代議士)の選出、その議会の責任において構成される内閣といった国家統治機構の成り立ちや、そもそも「人権」という考え方そのものすら、巨大な「エージェンシーコスト」となっているわけです。

組織構成員の大多数がそれで良いと判断するものでも奪えない個人が個人として尊厳を保つための権利、というものを、基本的人権として保証して、どのような権力(たとえ他人の人権をもってしても)奪えない、としている決め事なのです。

会社組織という利益共同体における運営にも、このエージェンシーコストの考え方は非常に重要になります。

会社のブランド、として、上述のような「危ない」取引はしないようにしてきた、というのが社歴が長い名門企業の誇りとするところでありそれがブランドとなるわけですが、急速に拡大する組織マネジメントに綻び(ほころび)が出たまま放置すると、時にとんでもないことが起こってしまうという教訓でもあるのです。

本日は、エージェンシーコストというものの事例を見ながら組織運営について考えてみました。

全能の運営者になり得ない以上、人間は「分業」という技を駆使してこれだけの世界、国際社会を作ってきました。

そのベースにあるものが、「信頼」であり、どのような競争環境に置かれていても、その上でお互いの立場や考えを「尊重する」ということが今後も絶対に必要となってくるでしょう。

日頃のマネジメントの工夫によりエージェンシーコストを適切なものに限ることは可能であると思いますので、なかなかできておりませんが言われた側になって考えるということは必要だと自戒を込めて書いておきます。

こちらからは以上です。

(2019年10月5日 土曜日)

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